業務の属人化を解消・防止するには?事例や対策方法を解説

業務の属人化は、多くの企業が抱える課題の1つです。特定の担当者しか業務内容を把握できない状況では、業務効率の低下やリスク増大につながります。
この記事では、属人化が起こる原因や属人化で発生するリスクとデメリット、属人化を解消するポイントを解説し、業務の属人化を解消した事例を紹介します。
目次
業務の属人化とは?
業務の属人化とは、ある業務の進め方や進捗などを特定の担当者しか把握していない状況のことを指します。つまり、その担当者がいなければ業務がスムーズに進まなくなってしまう状態です。
属人化は、個人の経験や勘にもとづく言語化や体系化が難しい「暗黙知」に頼っている状態ともいえるでしょう。本来であれば、これらの暗黙知も文書やデータとして共有できる「形式知」として蓄積する必要があるといえます。
また、属人化と混同されやすい言葉として「スペシャリスト」と「ブラックボックス化」がありますが、それぞれの意味は異なります。「スペシャリスト」は特定分野における高い専門性を持ち、組織の強みとなる人材のことです。一方「ブラックボックス化」は業務プロセスや知識が可視化されず、特定個人にしかわからない状態を指します。社内の知識をうまく活用できている組織では、スペシャリストの知識を形式知として共有し、ブラックボックス化を防ぐ仕組みが整っています。
属人化が起こる原因
企業や組織が属人化を防ぐためには、まずその原因を理解することが重要です。ここでは、業務の属人化が起こる主な原因について解説します。
<属人化が起こる原因>
- 情報を共有する仕組みが不十分である
- 専門性が高く、対応できる人が限られる
- 多忙で情報共有が不足する
- 属人化のリスクを理解していない
情報を共有する仕組みが不十分である
属人化が起こる原因として、情報共有の仕組みが不十分だということが挙げられます。情報共有の仕組みが不十分だと、業務知識の伝達に多くの工数がかかり、結果的に「伝えるのが面倒だから自分でやってしまう」という行動につながってしまうのです。
また、長年使用されているレガシーシステムを放置していると、業務が次第に複雑化し、最終的には社内の特定の人物しか運用を行えない状況に陥ってしまいます。システムの定期的な更新や見直しも、属人化防止には欠かせません。
この問題を解決するためには、会社のルールづくりを体系的に登録・管理できるシステムの導入が効果的です。例えば、マルチタスク管理システム「best job」の特許を取得している機能「Dルール(デジタルルール)」は、業務マニュアルやノウハウを簡単に登録・共有でき、組織全体でスムーズに情報を共有することが可能です。
■「Dルール(デジタルルール)」のサービスイメージ

専門性が高く、対応できる人が限られる
高度な専門知識や技術が必要な業務は、属人化しやすい傾向にあります。例えば、特殊なプログラミング言語を使用したシステム開発や、特定の業界に関する深い知見が必要な業務などは、対応できる人材が限られるため属人化が進みやすくなります。
このような専門性の高い業務は、基本的な知識や手順を可視化し、緊急時に最低限対応ができる状態を作っておかなければなりません。また、長期的には複数の担当者を育成し、知識の共有を積極的に行うことが求められます。
多忙で情報共有が不足する
担当者が目の前の業務をこなすのに精一杯で、業務の進め方やノウハウ、注意事項などを共有する余裕がない状態も、属人化が起こる原因となります。短期的な効率を優先するあまり、「今は忙しいから後で共有しよう」と先送りにした結果、情報共有の機会を逃し、結果的に属人化が進行するという悪循環に陥ってしまいます。属人化が進行しないよう、情報共有を業務の一部として明確に位置づけ、そのための時間を確保することが重要です。
属人化のリスクを理解していない
属人化のリスクを理解できておらず、情報共有や引き継ぎの意識が不足していることも、属人化が起こる原因のひとつです。自分しか遂行できない業務を作ることで社内における自分の立場を維持したいと考えたり、業務について指摘されたくないと思ったりすることで、意図的に情報を共有しないケースもあります。また、属人化は不正や事故、ハラスメントなどのリスクもあるため注意が必要です。
さらに、不十分な引き継ぎによって、新しい担当者が自分でゼロから業務のやり方を確立せざるをえない状況になり、新たな属人化が生まれることもあります。組織の文化として、知識を共有するという価値観を浸透させる必要があるでしょう。
属人化で発生するリスクとデメリット
業務の属人化は、組織にとってさまざまなリスクとデメリットをもたらします。ここでは、属人化によるリスクとデメリットについて解説します。
<属人化で発生するリスクとデメリット>
- 業務停滞で効率化が進まない
- 営業機会を逃しやすく、関係性が悪化しやすい
- 社内ナレッジやノウハウが蓄積されない
- 商品・サービスの品質が悪化する
業務停滞で効率化が進まない
属人化によるデメリットとして、業務が停滞し効率化が進まないということが挙げられます。属人化していると、担当者以外の人が代わりに対応できず、業務の停滞や遅延、ひいては組織全体の生産性低下を招いてしまいます。
また、担当者しか業務内容を把握できない状況では、上司や管理者が業務の質や効率性を正確に評価できません。どれだけ業務の質が高いのか、どれだけ以前より成長したのか、改善の余地はどこにあるのかといった点について、客観的な判断ができないため、業務改善や効率化が進みにくくなります。
営業機会を逃しやすく、関係性が悪化しやすい
取引先や顧客との関係が特定の担当者に依存している場合、その担当者が退職してしまうと、ビジネス上の重要な関係が損なわれるリスクもあります。顧客情報や過去の対応履歴、特別な取引条件など、重要な情報が共有されていないと、新しい担当者は適切な対応ができず、顧客や取引先の信頼を失い、関係が悪化してしまうかもしれません。
このような状況では、潜在的な営業機会を逃すだけでなく、最悪の場合は取引停止につながることもあります。顧客との関係は特定の個人に依存するのではなく、組織全体で管理・維持していく必要があります。
社内ナレッジやノウハウが蓄積されない
属人化が進んだ組織では、個々の従業員が持つナレッジやノウハウが蓄積されません。各担当者が独自に培った経験や知識、解決策、業務効率化のコツなどが形式知化されないため、組織が成長しにくくなります。組織全体として効率が悪くなり、競争力の低下を招く原因にもなります。
近年の人手不足の時代において、従業員一人ひとりのスキルアップが求められている中で、属人化が進んでしまうと、組織全体が停滞していくことになりかねません。
社内ナレッジの蓄積について、詳しくはこちらをご確認ください。
社内ナレッジを蓄積する方法は?ポイントやメリットを解説
商品・サービスの品質が悪化する
属人化している業務は、標準化された手順書やマニュアルが存在しないことも多く、業務の品質を一定に保つことが難しくなります。担当者によって品質にばらつきが生じやすく、ミスや漏れが発生するリスクも高まります。
特に複雑な業務や高度な判断が必要な業務では、個人の裁量に依存する部分が大きくなるため、担当者による差が大きくなってしまうでしょう。顧客満足度の低下や、企業の評判、信頼性に影響を及ぼす可能性もあります。
属人化の解消と、対策・防止する4つのポイント
業務の属人化がもたらすさまざまなリスクを回避するためには、計画的な取り組みが必要です。ここでは、属人化を効果的に解消・対策・防止するための4つのポイントについて解説します。
<属人化の解消・対策・防止する4つのポイント>
- 情報を簡単に共有できるナレッジ共有システムを導入する
- 手順のマニュアルを作成する
- 情報共有の促進と業務の引き継ぎを日頃から行う
- 定期的にフローやマニュアルを改善する
情報を簡単に共有できるナレッジ共有システムを導入する
属人化を解消するには、情報を簡単に共有できるナレッジ共有システムを導入する方法があります。例えば、マルチタスク管理システム「best job」の「Dルール(デジタルルール)」では、業務マニュアル機能やノウハウ、顧客管理、議事録などの入力や検索が簡単に行えます。特定の担当者が急に欠勤したり、退職したりして不在でも、ほかのスタッフが必要な情報にアクセスして業務を継続できる環境を整えることが可能です。
システム導入の際は、単に導入するだけでなく、全社員が積極的に活用する文化を醸成することも重要です。定期的な研修や利用状況の確認、活用事例の共有などを通じて、システムの定着を図りましょう。
手順のマニュアルを作成する
属人化を解消するには、詳細なマニュアルの作成が欠かせません。フローチャートよりもさらに具体的な手順やチェックポイント、注意事項などを含む実践的なマニュアルを作成することで、業務を標準化し、品質を安定させることができます。
また、業務に必要な手順が明確に示されていれば、新人や異動してきた従業員もスムーズに業務を習得でき、作業のミスや抜け漏れを防ぐことができます。
ただし、マニュアルを作って終わりではなく、定期的な更新や見直しの仕組みも同時に整備することが大切です。業務環境や条件は常に変化するため、マニュアルも継続的に改善していく必要があります。
情報共有の促進と業務の引き継ぎを日頃から行う
属人化を防ぐためには、情報共有と定期的な業務引き継ぎを日頃から行いましょう。緊急時や退職時になって慌てて引き継ぎをするのではなく、平時から計画的に情報共有を行う文化を整えておかなければいけません。具体的には、定期的なミーティングでの業務報告や進捗共有、ナレッジ共有のための定例会などが効果的です。重要な業務については複数担当制を導入することも考えられます。
定期的にフローやマニュアルを改善する
定期的にフローやマニュアルを見直し、実際の業務とマニュアルに乖離がないか確認することも属人化の解消には必要です。日常的にナレッジシステムを活用すれば、マニュアルの陳腐化を防ぎ、改善点もすぐに対応できるでしょう。
一方、ナレッジが共有されず放置されると、日常的に修正することがなくなり、あえて見直す機会を作る作業が発生してしまい、結果として業務フローの非効率化や属人化が進むリスクがあります。
業務を行う中で発見された改善点や効率化のアイディアを積極的に取り入れ、常にブラッシュアップに努めることが重要です。このようなPDCAサイクルを回すことで、業務プロセスは徐々に洗練され、より効率的で属人化しにくい仕組みに変えられるようになります。
best job導入により業務の属人化を解消した事例
ここからは、best job導入により業務の属人化を解消した企業様の事例をご紹介します。
給与計算・処理を代行で行う約100人規模の企業様では、顧客ごとに異なるルールや約束事を従業員が個別にメモやExcelで管理していました。しかし、仕様書のフォーマットが統一されていなかったため、個人の記憶や能力に頼らざるをえない属人化が進み、ケアレスミスの発生や優秀な社員の退職などの問題が生じていました。
そこで同社では、マルチタスク管理システム「best job」を導入。各担当社員の業務を日・週・月・年単位で分類し、イベント項目を洗い出した上で、それぞれにタイトルや根拠を含む概要説明を加え、プロセスのセグメント化を実施しました。さらに、タスクごとに具体的な手順(ToDoリスト)を決め、「best job」の特徴的な機能である「Dルール(デジタルルール)」を活用してシステムに登録したのです。
その結果、利用を開始して比較的早期に、伝達やレクチャー、指導、指示系の作業に効果を発揮しました。言葉でのやりとりが減少し、全体的に安心感と落ち着いた雰囲気が生まれただけでなく、業務や処理の分析・整理を通じて、従業員が自身の業務内容を見直す貴重な機会にもなりました。
事例について、詳しくはこちらをご確認ください。
給与計算アウトソーサーのお客様の導入事例
業務の属人化を防ぎ、企業・組織の成長につなげよう
業務の属人化は多くの企業が直面する課題ですが、適切な対策を講じることで解消できます。属人化が解消されれば、業務の効率化、リスク管理の強化、社内ナレッジの蓄積、そして商品・サービスの品質向上など、多くのメリットが得られるでしょう。属人化解消のためには、まず情報共有が簡単にできるシステムを導入するといった仕組みの整備が重要です。
マルチタスク管理システム「best job」なら、特許取得済みの「Dルール(デジタルルール)」を活用してマニュアルや社内ナレッジを簡単にライブラリーに登録でき、ノウハウやコツを確実に引き継ぐことが可能です。
■best jobの概要

さらに、日報や勤怠管理、プロジェクト管理、タスク管理などの機能も備えているため、業務全体の効率化にも貢献します。
「best job」を活用すればさまざまなナレッジが蓄積でき、従業員のスキルアップにもつながるでしょう。
■Dルール(デジタルルール)の機能

また、「best job」には、社員と職場の安心安全のための「エピソードToDo」(特許出願中)というシステムもあります。日々の気づきや悩み、出来事を記録し、必要に応じて他者と共有できるシステムで、個人の思いや経験を整理できるほか、ハラスメントなどの出来事を記録することで、安全確保やカタルシス効果(ネガディブな気持ちから解放され、精神的に安定する効果)、問題解決にもつなげられます。
社内ナレッジを有効活用し、企業の成長につなげるためにも、ぜひ導入をご検討ください。
よくあるご質問
業務の属人化とは?
業務の属人化とは、ある業務の進め方や進捗などを特定の担当者しか把握していない状況のことを指します。その担当者がいなければ業務がスムーズに進まなくなってしまう状態です。属人化が進むと、担当者の不在時に業務が停滞したり、知識やノウハウが組織内で共有されず、業務改善や効率化が進みにくくなったりします。特定の個人の「暗黙知」に依存するのではなく、組織全体で共有できる「形式知」を蓄積していくことが重要です。
属人化のデメリットは?
属人化のデメリットとして、業務の停滞によって効率化が進まなかったり、営業機会を逃しやすく、関係性が悪化しやすくなったりすることが挙げられます。また、社内ナレッジやノウハウが蓄積されないだけでなく、商品・サービスの品質が悪化することもデメリットとして考えられるでしょう。
属人化を解消するポイントは?
属人化を解消するポイントとして、まず情報を簡単に共有できるナレッジ共有システムを導入するとよいでしょう。さらに、詳細な業務マニュアルを作成したり、情報共有の促進と業務の引き継ぎを日頃から行ったりすることも大切です。定期的なフローやマニュアルの改善も必要になります。そして、知識を共有するという価値観を浸透させることによって、企業や組織の成長につなげられるようになります。