なぜ、組織は機能不全に陥る?「best job」開発責任者が語る、業務標準化で勝つ組織の作り方
「先輩に何度も同じことを聞くのは気が引ける」「部下に嫌われている気がして、進捗を確かめにくい」――。
職場では、こうした些細な遠慮や気遣いが積み重なり、属人化やヒューマンエラーを招きます。それが続けば、組織全体の生産性を低下させる原因にもなるでしょう。
マルチタスク管理システム「best job」の開発責任者であり、日本労務研究所の代表を務める特定社会保険労務士の奥山惠一は、「組織の課題は人ではなく仕組みにある」と指摘します。
今回は、人間関係に左右されない組織づくりの考え方と、その実現に欠かせない業務標準化、そしてAI時代に求められる仕事の仕組みについて話を伺いました。
奥山惠一
株式会社/社会保険労務士法人 日本労務研究所 代表、厚生労働省認可 総合経営管理協会 理事長、特定社会保険労務士、標準化アドバイザー、メンタルヘルス管理士、運行管理者、健康経営アドバイザー。
1975年に社会保険労務士資格を取得。東京都社会保険労務士会新宿支部長などの役職を歴任。企業の労務管理に関するコンサルティング・支援業務を行うほか、書籍の出版やセミナー、大学校等での講師活動を継続的に行っている。
目次
組織が機能不全になる原因は「人間関係のロス」
――デジタル化やAI化が進む一方で、業務の属人化やヒューマンエラーに悩む企業は少なくありません。こうした課題は、なぜ起こるのでしょうか。
奥山:属人化やヒューマンエラーが起きる原因のひとつは、「人間関係のロス」だと考えています。
職場では、「何度も質問しづらい」「忙しそうだから声をかけられない」といった遠慮や気遣いが日常的に起こります。こうした小さな心理的ハードルによって、本来必要なコミュニケーションが失われてしまうのです。
特にその影響が表れやすいのが、仕事を教える場面です。多くの企業では、座学研修やOJTを通じて業務を習得しますが、教育担当者と学ぶ側の関係性によって、説明が不十分になったり、質問をためらったりすることは珍しくありません。
私は、このような忖度や躊躇、遠慮、苦手意識が生む見えないブランク、ひいては人間関係の悪化を「人間関係によるロス」と呼んでいます。このロスが積み重なることで、属人化や引き継ぎ不足、ヒューマンエラーが発生し、組織全体の生産性が低下するのです。
――確かに、人間関係によるロスには心当たりがある人が多いと思います。
奥山:人間関係によるロスは、誰もが一度は経験したことがあると思います。このような人間関係のズレや摩擦、悪化は時間と精神的エネルギーを必要以上に消耗してしまうのです。
そうなった場合に企業側はどうするかというと、「いい人間関係」をつくって問題を解消しようとします。全社員参加型のイベントを開催する、役職に関わらず「さん」付けで呼び合うなど、さまざまな取り組みを見てきました。
もちろん、それが効果を発揮することもあるでしょう。しかし本来、会社は仕事で成果を出すための場です。
より良い人間関係づくりに頼るのではなく、人間関係に左右されなくても成果を出せる「仕組み」をつくることが、企業として目指すべき姿ではないかと私は考えます。
――ハラスメントに敏感な昨今、教育担当者の負担も大きくなっているように感じます。
奥山:そのとおりです。今は、学ぶ側の心理的な不安や価値観に配慮した指導が求められ、教育担当者には、以前にも増して高いコミュニケーション能力が求められるようになりました。
また、すべての人が教えることを得意としているわけではありません。「リーダーシップがあって優秀でも教えるのが苦手な人」や「本来の業務に集中して成果を追求したいと考える人」にとっては、教える時間自体が苦痛ですよね。
学ぶ側の能力や性格にも差がありますから、誰を担当するかによって成果が変わり、教育担当者自身の評価が左右されることも少なくありません。
だからこそ、個人のコミュニケーション能力に依存するのではなく、誰が教えても、誰が教わっても同じ品質で仕事を進められる仕組みが必要なのです。
自らの経験を通じて痛感した「業務標準化」の重要性

――奥山代表が組織改善の方法を考えるようになったきっかけを教えてください。
奥山:きっかけは、私自身が独立し、事務所の運営を拡大する中で、人を育てることの難しさを痛感したことです。
教える私自身の気分の波やコンディションによって、教え方にバラつきが出てしまい、特に忙しいときや余裕がないときは説明が不十分になっていました。あとから「あれを教えてなかった」と気づくことがあり、我ながら褒められたものではありません。
そこで、分厚いマニュアルを作り、新人研修のたびに活用することにしました。しかし、残念なことに、それでも説明漏れや理解不足はなくなりません。もちろん、社員にマニュアルを渡しても同じです。
そうこうしているうちに、業務を体系的に理解できた人とそうでない人で、業務の質にバラつきができ始めました。ちょっとしたヒューマンエラーもたびたび起こります。
そのたびに顧客に謝罪し、「このまま放置していると、いつか重大な事故につながるのではないか」という危機感を感じるようになりました。
――複雑な法改正の理解や判断を伴う社労士の業務は、教えることも多い仕事ですね。
奥山:特に労務管理や各種手続きは、担当者の知識や経験によって対応力に差が出やすい業務です。万が一、対応の遅れや重大なミスが発生すれば、お客さまに金銭的な損害を与えるだけでなく社会的信頼を失う可能性もあります。
だからこそ、誰が担当しても同じ品質を維持できる仕組みが必要だと考えるようになりました。
その仕組みを実現する方法を模索するなかで、当初は一般的なタスク管理のように、業務の流れに沿って仕事を整理していました。しかし、試行錯誤するうちに、「まず、やるべきToDo(具体的行動)を洗い出し、それをタスクに落とし込む」という逆転の発想が生まれたんです。
この発想をもとに生まれたのが、業務を「プロジェクト」「タスク」「ToDo」の3段階で整理する「3分割整理法」です。これが、後に開発するマルチタスク管理システム「best job」の原点となりました。
そして今、デジタル化やAI化が進むなかで、この業務標準化の考え方はますます重要になっていると感じています。
DX・AI時代だからこそ業務標準化が欠かせない
――業務標準化とDX・AIには密接な関係があるのでしょうか。
奥山:あります。DXやAIツールを現場で活用するためには、業務標準化が欠かせません。
AIツールを導入する企業は増えていますが、現場で定着せず、十分に活用できていないケースも少なくないでしょう。
その大きな理由の一つが、業務そのものが整理・標準化されていないことです。
特に、専門知識や判断が求められる業務では、その傾向が顕著です。
例えば、社労士業務では手続きや判断基準が複雑で、担当者の知識や経験に依存しやすいという特徴があります。法律や医療、財務など、専門性の高い分野ほど属人化しやすく、AIに任せようとしても業務フローや具体的な作業が整理されていなければ、期待した成果は得られません。
■AI化がうまくいかない状態の企業や事務所

だからこそ重要なのは、AIを導入する前に業務を具体化、および標準化することです。AIは具体的なルールや手順があって、初めて正確な判断ができます。
業務の手順や判断基準を整理し、誰でも同じように仕事を進められる状態をつくって初めて、DXやAIは本来の力を発揮します。
多くの企業や職場では、業務標準化の必要性は十分に理解されており、実際に取り組みも進められていますが、思うような成果につながらず、途中で頓挫してしまうケースも少なくありません。
私は、その大きな原因は、標準化を進めるための「方法」と「ツール」が不足していることにあると考えています。
業務標準化を成功させるには「人選」も重要
――システムやツールは「導入したけど活用できていない」という声をよく聞きます。現場に浸透させるには、どのような工夫が必要だと思われますか。
奥山:システム導入でよくある失敗は、現場を知らない上層部が導入を主導して空回りするパターンと、現場に決定権がないため導入を推進できないパターンです。
そのため「best job」のような業務ツールを導入する際は、ぜひ「人選」を意識してください。
具体的には、「仕事内容を熟知している人」と「決定権限を持っている人」の2人が中心となる体制がおすすめです。前者は、現場のエースや若手で、好奇心をもって仕事に取り組める人が望ましいでしょう。
この2人が導入プロジェクトを主導することで、現場の知見を活かしながら、組織全体を巻き込んだツール導入をスムーズに進められます。
「best job」で叶う業務標準化
――ここからは、業務標準化を実現する「best job」について教えてください。まず、どのようなシステムなのでしょうか。
奥山:「best job」の中核となるのが「Dルール(デジタルルール)」(特許取得済み)という機能です。当社独自のメソッド「三分析整理法」(特許取得済み)をもとに、業務を「プロジェクト」「タスク」「ToDo」の3段階に整理し、手順や注意点、必要な情報をまとめたデジタルマニュアルを作成できます。
つまり、仕事を誰でも再現できる「レシピ」のように標準化できるほか、業務に必要なナレッジを蓄積し、組織全体でチェックできる仕組みです。
作成したタスクやToDoには締切日を設定でき、それぞれの担当者へ自動で割り当てられます。
■「プロジェクト」「タスク」「ToDo」の三分析整理法のイメージ

なお、ToDoには「商品・サービスの資料」「プロジェクトごとのルール」「関連する法律」などを注意点として記入できます。PDFの添付や参考URLの記載もできるため、マニュアルを見ながら別の資料を探したり、上長に何度も確認したりする手間を軽減できます。
■ToDoに入れられる情報

こうして業務をレシピ化することで、新入社員でも迷わず作業を進められるようになり、品質のバラつきや属人化、作業漏れの防止につながり、業務の引継ぎもスムーズ、かつ正確に行えるようになります。
――Dルールは作業する側には便利な反面、Dルールの作成者には負担にならないでしょうか?
奥山:Dルールは一度作れば更新しながら長く使えますが、ゼロから作るには時間も手間もかかります。
そこで開発したのが、業務フローの「たたき台」または「理想形」をAIが自動生成する生成AIテンプレート「AIジョブアナリスト」です。
例えば、「AIジョブアナリスト」に「年末調整のタスクを分析してください」と入力するだけで、一般的な業務のタスクやToDoが瞬時に出力されます。
当社では、「AIジョブアナリスト」を活用しながら、現場で活用できる自社版の「仕事のレシピ」を効率よく整備する支援をさせていただきます。
ゼロからDルールを作る必要がないため、効率よく作成できます。
「AIジョブアナリスト」について、詳しくはこちらをご確認ください。
日本労務研究所が提供する業務標準化メソッド”best job” の三分析生成AIによる業務改善支援の特許を取得
「best job」ならではの特徴

――「best job」とほかの管理システムとの違いはどこにありますか。
奥山:大きな特徴は、プロジェクト管理や業務マニュアル、タスク管理、日報管理、勤怠管理を1つのツールに一元化できることです。さらに、行うべきToDoをあらかじめレシピとして整理しておけば、必要なタイミングですぐに確認・活用できます。
多くのシステムでは、マニュアルはマニュアル、タスクはタスク、日報は日報というように、それぞれ別のツールで管理されています。
一方、「best job」は、Dルールを軸に、業務マニュアル、プロジェクト管理、進捗管理、日報管理、勤怠管理までを一つの仕組みで運用可能です。そのため、情報を探したり、複数のシステムを行き来したりする手間がありません。
担当者はToDoに書かれている業務が完了したら各項目にチェックを入れるだけで、進捗を可視化できます。チェックをすると自動的に日報にも反映されるため、わざわざ勤務終了時に1日の業務内容をテキストで入力する必要もないのです。
■「best job」のチェックボックス機能のイメージ

また、プロジェクト内の各ToDoの状況がリアルタイムでわかるため、管理職は「お願いしたあれ、終わった?」「この仕事、早くしてね」といった口頭で進捗を確認したり、催促したりする場面が減らせます。冒頭でお話しした「人間関係のロス」の解消にもつながります。
――業務管理以外にも、組織づくりを支援する機能があるそうですね?
奥山:はい、「いつでもエピソード」という機能です。これは、職場での出来事や気づきを記録し、ハラスメントの防止や健全な組織づくりを支援する機能です。
本人だけがアクセスできる秘密鍵で管理されるため、記録内容は保護されます。必要に応じて、社内外の相談窓口や信頼できる第三者へ共有することも可能です。記録と共有を通じて、問題を一人で抱え込むことを防ぎ、早期の対応や適切なサポートにつなげられます。
出来事や感情を書き出すことで心を整理する「カタルシス効果」が期待できるほか、従業員の不安やストレスの早期把握にも役立ちます。
「いつでもエピソード」については、動画で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
「いつでもエピソード」の動画
「best job」で、「気を遣わずに頭を使う組織」を目指そう
――最後に、属人化や人手不足の解消に向けた仕組み化を検討する企業に、メッセージをお願いします。
奥山:慢性的な人手不足による外国人労働者の増加やAIの普及などを背景に、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
こうした時代に必要なのは、人間の根性や犠牲心に依存した精神論ではなく、誰が担当しても一定の品質で成果を出せる「仕事のOS」だと私は考えます。
社内の人間関係に気を遣うのではなく、ぜひ創造性や判断力、意思決定力が求められる仕事に頭を使いましょう。
「best job」は、オフィスワークだけでなく、「肉体労働を伴う工事現場」「外国人労働者が多い職場」「技術継承が求められる伝統工芸」「制度が変わりやすい教育現場」などで、さまざまな職種・業態での業務標準化支援が可能です。
実際に導入企業では、業務の標準化によって賃金コストの削減や生産性向上につながった事例もあります。
人間関係の無駄なロスを減らし、価値を生み出す仕事に集中できる環境をつくることが、DX・AI時代でも成果を出し続けられる強い組織につながると考えています。
業務の属人化、教育コスト、
単純ミス・・・
best jobがまとめて解決します!
"Dルール"のおかげで、
引き継ぎ時間が4分の1になりました!
【監修者】
奥山惠一
株式会社/社会保険労務士法人 日本労務研究所 代表
厚生労働省認可 総合経営管理協会 理事長
- 特定社会保険労務士
- 標準化アドバイザー
- メンタルヘルス管理士
- 運行管理者
- 健康経営アドバイザー
1975年に社会保険労務士資格を取得。東京都社会保険労務士会新宿支部長などの役職を歴任。企業の労務管理に関するコンサルティング・支援業務を行うほか、書籍の出版やセミナー、大学校等での講師活動を継続的に行っている。
著書に『労務トラブルの防ぎ方、まさかのときの解決法』(以上明日香出版社・共著)、『経営労務監査の手法』(中央経済社・共著)、『就業規則サンプル・ルール』(労働新聞社・共著)、『職場のコミュニケーション改善の処方箋』(日本法令・共著)などがある。
